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ESSAY & INTERVIEW

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〜個々の長所を生かして大きな力となる~

投稿日 2023/7/24

Text&Photo:Yuichiro Terui(5D)

私は陸上競技をやっているのですが、たくさんの日本人を感動させたあのビックイベントを見て一つ感じた事があります。

それは、今年3月に行われたWBC。私は春休みということもあり一回戦の中国戦から決勝のアメリカ戦まで全試合をリアルタイムで見ることができました。試合を見ていると、選手一人一人がそれぞれ各々の長所や強みを生かしている映画の登場人物のように見えてきました。選手各々の長所、強みとは例えば、佐々木朗希選手や山本由伸選手など投手陣は、世界の強打者を次々と抑える持ち前のコントロール、吉田正尚選手などのような強打者は、日本を勝利へと導く優れた打撃技術。周東選手のチャンスを作る脚力や源田選手のチームをピンチから救う好守備など。まだまだたくさんありますが、これ以上例を挙げると長くなるのでこのくらいにします。このような自分の長所でチームに何ができるかを選手全員が真剣に考えて、その選手一人ひとりの長所を集めた最強のチームで世界一を目指す日本代表選手の姿が、私を映画を見ている感覚にさせたのです。

それぞれの長所を集めると聞いて、レオ・レオニの『スイミー』を思い出しました。兄弟が大きな魚に食べられてしまった黒い小魚スイミーが赤い小魚の群れを見つけ、その魚たちと食べられないように大きな魚のふりをする話です。皆さんも子供の頃に読んだことがあるのではないでしょうか。この話では、赤い魚たちは大きな魚の胴体、黒い魚のスイミーは目のふりをしました。一匹ずつでは無力でも、みんなで力を合わせれば大きな魚を恐れずに自由に海を泳げる。個性、長所を生かすことのすばらしさを伝えてくれるいい作品だなと感じます。

このように、一人ひとりの長所をあわせて強いものをつくるということはたくさんあります。そして、私やその周りにもそのような事例があるということに気が付きました。私は現在、陸上部の短距離ブロックに入っています。陸上は100m走などのように個人競技ばかりのスポーツですが、一つだけ団体競技があるんです。それが4×100mリレー。400mを4人でバトンをつなぎ、そのタイムを競う種目です。オリンピックや世界陸上で1度は見たことがあるでしょう。この学校の4×100mリレーチームは先日、4位と好走して見事都大会に進出しました。都大会に行くくらいならメンバー全員がトップレベルの選手なのだろうと思う方もいるかもしれません。しかし、4人のメンバーで都大会に個人種目の100mで進出した選手は1名だけ。他の選手はみんな11秒後半と決して個人で見ると速い選手ではありません。個人で見るとよくない成績ですが、リレーになると都大会に進出することができます。それはなぜか。私は、チームワークの良さと一人一人の長所を生かして走順を決めているからだと考えます。スタートがうまい選手が1走はもちろんのこと、カーブがある3走はコーナーワークがうまい選手、最後どんな状況でも競り勝てる鋼のメンタルを備えた選手がアンカー4走。自分の長所がこのリレーにどう活かせるかを考えてチームのために0.01秒を削りだす。そしてその長所をほかの高校より活かしてチームとして発揮することでほかの高校よりも速いタイムで走ることができるのでしょう。

今回、WBCなどを通じて、自分たちが長所を活かし、集団で発揮すれば強くなることを感じました。日本には「出る杭は打たれる」ということわざがあるように、人の長所が封じられているような風潮があるように思います。しかし、個々の長所には果てしない可能性があり、その長所を尊重し、活かすことが私たちにとって重要なことではないかと思います。