早稲田大学までの一貫教育の中で、初等部の6年間は基礎力を身につける大切な時期です。初等部の役割は、初等教育を担い確かな基礎学力を身につけて中・高等部へと送り出すこと。そして児童・生徒一人ひとりの成長の過程に応じたきめ細やかな一貫教育を通じて、子供たちは長いスパンで人生の目標を設定し文武両道に励むことができます。また受験勉強への対応に追われることなく、児童のもっている多様な個性の芽や資質をしっかりと伸ばすことができます。初等部は、中・高等部、早稲田大学を通じて母校愛を強く育て、将来の日本を担う心優しい人材の育成を目指しています。
同じ敷地内に校舎があるので、さまざまな交流を図ることができます。高学年の児童を対象に吹奏楽部が演奏会を開いてくれたり、チアリーダーがダンスクラブに教えに来てくれたりします。また、図書委員が初等部の児童にお勧めの本を読み聞かせてくれます。
このような交流を通じて、中・高等部生に憧れを抱くなど、たくさんの刺激を受けています。
大学までの一貫教育により、自主独立の気風にあふれ広く社会に貢献できる人間の土台を確立するため、本校では以下の教育方針を実践していきます。
早稲田実業学校初等部は、一人ひとりの子どもが人間として自立し、生きていくための素地を培い、土台をつくるために、本来あるべき学習を通じて、子どもたちをのびのび、いきいきと育てます。
現代の「早く便利に」という効率至上主義は、子どもたちから手仕事を奪ってしまいました。私たちは手でものを作り出す経験をたくさんさせたいと考えます。それは単なる手先の訓練ではありません。例えば、ナイフを使えば、道具の機能やものの性質に気づき、新たな創作意欲が芽生えたりします。手仕事は、創造力の源なのです。
同じように、自ら考えて作る詩や作文、自ら創り出す美術、自ら表現する音楽など個性を伸ばす表現活動も積極的に取り組んでいきます。創造する喜びや表現する楽しみを知ることで、子どもたちは自発的、主体的にものごとに取り組めるようになるのです。
現代の生活環境にあって、からだと心を強くしなやかに鍛えるため、積極的に子どもたちを自然のなかに解き放ち、身の回りの自然から自分が見つけたことを発表させたり、みんなで考えたりしながら、自然を本質的にとらえる目を養わせていきます。五感をつかって自然とふれあう活動は、人間同士のコミュニケーションも旺盛にし、自然科学の基礎的な事実、概念、論理などを深めていきます。
また、自然発見に低学年から取り組みます。自然といっても、特別な環境に出かけるというものではなく、子どもたちの生活の中にある身近な自然や環境に自ら働きかける活動です。学校や家庭での生活の中で、出会う自然の出来事に、進んで「見て」「触れて」「耳を澄まして」「嗅いで」そしてときに「味わって」みることで、子どもたちはたくさんの驚きを抱き、自分自身で見い出した事実を見つけます。これらの個々が見いだした自然の事実を教室に持ち寄り、みんなで伝え合い考え合うことで、自然の本質に迫り、たくさんの知恵を身につけています。
これは自然に関する学習に止まらず、「自分の意見や考えをいかに伝えるか」というコミュニケーション能力を育てる学習でもあります。自分なりの工夫を重ね、自分の考えを他の子どもたちに伝えます。発表に対して質疑応答もあり、自分の意見をさらに深めたり、伝え方をより高めたりしていきます。このように自然発見は、問題解決のプロセスを踏みながら、自己の表現力を磨く場でもあるのです。
初等教育では、国語と算数を貴重な基礎学習に位置づけ、自分の頭で考える力を養うのに、不可欠な要素としています。一人ひとりが持っている能力を引き出し育てるためには、教え込むばかりではなく、時に自分で課題を粘り強く追求させていくことも必要です。
現在の状況の中で子どもたちは、あまりに多くのことがらを早い時期に教えられすぎ、自分でものを考えられなくなっています。考えることの入り口は、素朴な驚きや発見です。
私たちは、蓄積された先人の教育研究に学び、子どもたちの知的好奇心をかきたてる工夫をおこたりません。「考えることは楽しい」という充足感を少しでも多く体験してもらいたいからです。日本の教育改革のモデルとなるような試みを日々実践していきます。
現代社会では、自分で主体的に情報をとらえて組み立て、自ら発信していく力が、より一層求められるようになります。低学年から読解を中心に日本の文化に触れ、日本語の美しさ、日本文学のすばらしさを感じながら、コミュニケーション能力の育成にも役立てています。
一方で、加速された国際化の進展にも対応していかなければなりません。しかし、外国語学習に力を入れるだけでは、国際社会で通用する人材は育ちません。相手の行動背景にある文化を尊重できて初めて真の「国際理解」は生まれるのです。それにはまず、日本の文化に誇りをもてなければなりません。同時に自分の考えとともに母国の文化を発信できる能力を身につけさせたいと考えています。
1年生から、ネイティブと日本人の教員の英語授業を実施しています。その中で5年生では、「英語と日本語の違い」を各自で調べ、留学生に質問して、ことばや文化などの違いを聞きとる交流活動を行っています。6年生では、国分寺駅の周辺で行う活動の他、社内にて英語を使用している会社にも見学に行き、英語の大切さを実感体験もしています。
3・4年生では、これから国際社会に向けて成長していく子どもたちのために、早稲田大学国際異文化交流センター協力のもと、留学生と早大生のペアで授業を実施しています。韓国出身の留学生は韓国語で、フランス出身の留学生はフランス語で、出身国の文化や歴史、習慣などを楽しくわかりやすく授業を行います。
「真の生きる力を育むホームステイ」というコンセプトの下に10泊11日間オーストラリアのブリスベンで生活をします。その近郊のILCP(イマニュエル・ルーサラン・カレッジ・プライマリースクール)やホストファミリーの家でバディと共に過ごす貴重な体験ができます。学んできた「英語やコミュニケーション能力、国際理解の心」を活用し、その力を試されていると実感する素晴らしい体験となるでしょう。
夏休みの約10日間を利用して、ハワイのミッドパシフィック校主催のサマープログラムに参加します。英語の学習を中心に、演劇、英会話、ウクレレ演奏、工作、ダンス、ゲームなどを通じてハワイの文化に楽しく触れます。また保護者の方にも英会話やフラダンス、ウクレレのレッスンを開催し、普通の家族旅行では経験できない魅力的なプログラムとなっています。
7月下旬に早稲田大学の先生と一緒にまわるフィールドワーク(半日)と、8月の夏休みに大隈侯の故郷佐賀市と早実の「去華就実」「三敬主義」の礎を作った天野為之先生の故郷唐津を親子でまわるフィールドワーク(2泊3日)を通じて、早稲田大学と早稲田実業のことを深く楽しく学んでいく企画です。
5・6年生の児童と保護者を対象に、3泊4日の日程で東日本大震災から復興が進む宮城県南三陸町をフィールドにして「海・山・人」をテーマに様々な体験学習を行います。海洋生物学から海と森のつながり、自然と人間の関係といった幅広い内容を親子で楽しく学びます。
2015年度より初等部と中高等部の連携を強めるために「初中連携教員」を採用し、5・6年英語・算数・社会で専門的な授業を展開しています。また、授業だけでなく、校外学習やオーストラリアホームステイの準備などにも参加しています。これによって、児童生徒の理解、教員間の連携も深まってきています。また、中等部進学の際の不安なども取り除かれ、連続的な指導ができると考えています。今後、「初中連携教員」を中心に、児童生徒の連携、学習面での教科の連携、システム作りなども実施しながら、新しい早実を構築しています。
開校以来継続して行っている校外学習は、さまざまな成果をあげ、子どもたちの心身の健やかな育成につなげています。
「校外学習」と聞いて、どんな活動を思い浮かべるでしょうか。早実初等部では、実物にふれる・五感で味わう・仲間と共に汗をかく、こうした活動を大事にしています。「相手の気持ちは、彼と同様の体験した自分しかわからない」(ドイツ・教育学者シュプランガー)と言われるように、教室において座学で学んだことは自らの体験を通して初めて「そうだったのか」と納得できるようになります。授業で理解したことが、知識として定着するようになります。低学年の時期に学ぶ生活科を延長させて、社会科や理科といった教科のカリキュラムを発展させた体験活動を重視しています。
5年生では、6月に田植え、10月に稲刈り体験を行います。ヌルヌルの田んぼに最初に足を入れたときには一同大騒ぎですが、少しなれてくると気にならなくなりました。農家の方の気持ちになって一本一本心を込めて植えました。秋に稲が大きく育ち、黄金色の実をつける頃に稲刈りです。たわわに実った稲穂の束を、一人ひとりが鎌で丁寧に刈り取っていきます。今では機械であっという間の作業ですが、苦労を感じることができる体験です。早実の校章にある稲穂の姿を思いうかべてあらためて自分が早実生であることを実感しました。
新緑がまぶしい初夏5月に、学年ごとに遠足に行きます。1・2年生では、みんなで仲良く楽しく過ごすことをねらいの一つとし、まだ自然が豊かに残る記念公園や動物園などへ出かけます。自然や季節、動物の迫力を感じながら遊びの中で、仲間の大切さや集団の一員としての意識の向上、命の大切さなどを学びます。3年生以上は、自然豊かな高尾山や森林公園などを訪れます。まさに大自然に身を投じ、自然の素晴らしさや雄大さ、厳しさなども学んでいます。厳しい道のりを、みんなで協力し励ましあいながら頂上に到達したときの達成感や感動は、子どもたちの心に財産としていつまでも残り続けます。子どもたちは目標を立て、それに向かって努力することの大切さを実感し、日頃の学習活動にも大いに生かされています。
宿泊体験学習を通して、子どもたちは自然豊かな土地で、大自然につかりながら様々な体験活動を行います。また、自然だけでなく、現地の産業や文化、歴史にも触れ、時には講師を招きお話を伺うなど、その土地についても詳しく学習します。出発にあたり事前学習をしっかり行い、一人ひとりが目的意識を持ち当日を迎え、事後学習では現地で学んだことを発表するなど、宿泊体験学習のまとめをしっかり行い、身につけていきます。
今年度は、3年生は高尾の森、4年生は長野県駒ヶ根市にある早実駒ヶ根校舎、5年生は長野県志賀高原、6年生は滋賀・京都へ行き、宿泊をしながら学習を進めています。