Text&Photo:Mitsuki Oda(5C)
今回は私が今までに読んだ小説の中で印象に残っているものの一つをご紹介します。
星新一さんをご存じでしょうか? SFやファンタジー、恋愛など様々なジャンルの短編小説を残した小説家です。有名な著作には「ボッコちゃん」「気まぐれロボット」などがありますが、残念ながら私は紹介したい彼の小説のタイトルを忘れてしまいました。
ですが内容はしっかり覚えているので、軽くあらすじを説明したいと思います。
その物語の舞台は、砂漠の惑星の刑務所です。
主人公Rを含め罪人たちには、数十年は充分な食料と、ボタンを押すと水が生み出される球体装置が与えられていて、一見ただの島流しの刑のようです。しかし水が出てくる装置には仕掛けが隠されており、X回ボタンを押すと爆発してしまうのです。それは一回目かもしれないし、百回目か、運が良ければ一万回目かもしれないが、その答えは誰も知りません。砂漠の過酷な環境で生きるには装置からの水が必要、しかし今回こそ爆発するかもしれないという恐怖感が常に付きまといます。
私はこれを読んだとき、何かを怖がっても、そうなるときはなるので仕方ないものだと割り切ってしまうほうが楽になれるというメッセージもあると思いました。恐怖を抱くこと自体が何よりも自分を苦しめることになるのだと。
私がこれを初めて読んだのは小学2年くらいの時だったんですが、その時はこの話は大して印象に残りませんでした。なんでしばらく経ってからこの本の話を思い出したかというと、ちょっと前に、私が過剰に心配性な時があったからです。それはたまに強迫観念にも近かったので(例えば家のブレーカーを全て落とさないと家が燃えるんじゃないかとか、登校中ホームで急に誰かに突き落とされるんじゃないかとか、一番酷いときは家から出て30分くらい経った後に戸締りが心配になって、急ぎの予定があったのに家に戻ったり)
結構困ってたのですが、そんな時期にふとこの話の存在が思い浮かび、怖がることは無意味だと心がけるようにしました。すると不思議なことに、少し時間はかかりましたがこの変な心配性は頭の中から消え去っていったのです。
もちろん一回押しただけで爆発する装置もあると物語内で示されているように、不安に思う気持ちが現実にならないとも限りません。ただ、それを怖がる時間より、気にしないで楽しく過ごす時間のほうが価値があると思うのです。でも、そうやって論理的に自分の気持ちを調整するのって心がけてもなかなか難しいですよね。
星新一さんの小説はこのように、短いながらも様々な考察ができる面白いものばかりです。
他にもたくさんあるのでぜひ読んでみてください!
ちなみに他のおすすめは、『悪魔のいる天国』(新潮文庫)という本に収録された、どちらの経営する天国に死者をたくさん連れてこれるか争う、天使たちの短編小説です。