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ESSAY & INTERVIEW

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ファンタジーな曲に隠された魅力  ~セカオワの音楽性~

投稿日 2023/9/4

Text&Photo:Kaiji Nakada(5C)

SEKAI NO OWARIというバンドを知っているだろうか?最近では「Habit」という曲が大ヒットしたので、聞いたことがある人が多いのではないだろうか? いや知っていることを願いたい。僕はこのバンドの大ファンで、長年彼らの音楽にとても魅了されている。そして僕はもっと多くの人に魅力を伝えたい。そこで僕はほんの少しではあるが僕の思うSEKAI NO OWARIの魅力を伝えていこうと思う。

まず彼らのバンドはピアノとギターとDJによって音楽を奏でている。ここで「ん?」と違和感を感じたのではないだろうか? そうだ。ドラムとベースがいないのだ! そんな異色のバンドであるSEKAI NO OWARIだが、ドラムとベース不在の中で、彼らはどんな音楽を奏で、そして僕は彼らのどんなところに惹かれたのか?

ずばりそれは曲調と歌詞のギャップにあった。前述した通り、ベースとドラムがいない彼らだが、彼らの音楽にはそれを生かしたファンタジーをテーマに曲を制作していることが多く、曲調はpopである事が多い。ファンタジーな雰囲気を出しつつも歌詞はリスナーに寄り添ってくれるような勇気を与えてくれるものや確信をついたすこし現実的でドキッとさせるものになっている。それに加えてその歌詞はストレートに表現するのではなくとても巧みな方法で表現されている。ではどのような表現方法なのか、多少気になっていると思うので、ここでいくつか実際の歌詞を引用してみる。

止まない雨はないと信じて歩けるかな」このなんとも幻想的な歌詞は「花鳥風月」という曲の2番に登場する。この歌詞の何がすごいのか? 普通「勇気をもって突き進もう」と自信をなくしている相手に伝えるとき、なんて伝えるだろうか? 少なくとも「雨」を用いるなんてことは考えないだろう。つまりなにが言いたいかって? それは「勇気をもって信じて歩こう」というメッセージを直接的に歌詞とするにではなく、あえて雨という現実的に絶対に「止まない」ことはないものに例えることで聞いている人に「報われない努力はないんだ」と強く思わせるような歌詞にしているところだ。こんな言葉を思いつく人は並大抵な人ではない。

もう一つ歌詞を引用してみる。「せいぎせいぎせいぎせいぎ…の中にあるたくさんのギセイを君は絶対に疑わない」これは「Death Disco」という曲の一部である。「なんだこれ」と思うかもしれないが、この歌詞をよーく見てみてほしい。1文字目から読むと正義の羅列だが、3文字目から読んでみると……犠牲の羅列になっている。この歌詞は一種の発明だといっても過言ではないほどの歌詞だと僕は思っている。この歌詞で伝えたいことは「自分が思っている”正義”は世界中の人々にとっての正義にはならない。人の正義に犠牲が付き物であることを理解しよう」ということであるが、単純に歌詞にしてしまえば共感する人は少ないだろう。この正義、犠牲というのは漠然としすぎていてかつ伝えたい内容が難しすぎるからだ。それをリスナーに聞いてもらうために、「せいぎ」を羅列して、その中に「ギセイ」という言葉が出てくることによってスケールが大きく複雑なものを簡単に理解できるものに置き換えて表現している。このわかりやすくかつリスナーにハッとさせるような歌詞は多くの人を魅了させていると僕は思っている。

ここまで主に歌詞の巧妙さについて重点をおいてこのバンドの音楽性についてごく一部であるが説明してきた。ファンタジーでpopな曲調×巧妙な歌詞のギャップこそが僕がこのバンドに惹かれた理由である。この他にも恋愛について、世界平和について、善意とはなど様々なジャンルで曲が作られていて聞いている人を飽きさせない。ぜひともこの魅力あふれるバンドの曲をより多くの人にメロディーに注目して、そして歌詞に注目して聞いてほしいものだ。