Text:Natsuki Hayashi・Kanta Minegishi Edit:warashibe
今回は、幼少期から様々な国で暮らしてきた卒業生へのインタビューです。大学ではその経験を生かして多彩な活動に取り組まれてきたとのこと。「挑戦」と「出会い」の大切さについて、語っていただきました。

川上 桜子(かわうえ さくらこ)
初等部から早実に入学。在学中は少林寺拳法部、商業経済部で活動し、高等部ではドイツ留学も経験する。早稲田大学政治経済学部経済学科に進学し、2025年3月卒業。
――大学での活動について教えてください。
大学では国際的な活動に色々取り組んでいました。幼少期に中国とイギリスに住み、高校生の時はドイツへ1年ほど留学していた経験があり、英語を使って自分とは異なる背景を持つ人と話せる面白みを感じていました。また、一歩踏み込んだ議論などで、自分が伝えたいことを思うように伝えることにはまだまだ課題があると感じていて、英語を話す機会を増やしたかったというのもあります。
その一つが「OVAL JAPAN」という学生団体で代表を務めたことです。「OVAL JAPAN」は、日中韓の大学生を参加者にしたビジネスコンテストを運営する団体の日本支部で、中韓の支部とも協力しながら活動を行っています。ビジネスコンテストとは、「DXに関連するビジネス」など一定のお題が与えられたうえで、参加者がチームを組みビジネスのアイディアを作り、財務計画等まで考えて、その完成度によって勝敗が決定するイベントです。OVALの面白い点は日本、中国、韓国の大学生が3人1組になるようにチームを組んでコンテストを行う点にあると思います。大学1年の夏から大学2年の夏までの1年間の任期で代表をやっていました。
――特に大変だったことや、活動を通して得られたものはありますか?
私たちの代はいわゆる「コロナ禍」の時期にあたっていましたので、オンラインゆえに生じる問題というのが多々ありました。せっかくコンテストに参加してくれたのに、オンラインでのコミュニケーションの行き違いがストレスになって、途中で参加者の方が来なくなってしまったり。そこでグループに一人運営側からメンターをつけようとしたんです。でも他国の支部からは反対の声があがりました。メンターの質によって結果が左右されるのでフェアではないという理由で。またメンターが入ることで、参加者の「自分らしさ」が阻害されるという懸念もあったようですね。
日本支部は参加者の体験の質の向上、他国支部はお金を払って参加していただいている参加者に対するフェアさをより重視していて、同じイベントを共同して運営するにしても優先事項が食い違っていたわけです。結果的には、ビジネスプランには干渉しないが参加者の日々の不満の拾い上げや英語でのコミュニケーションのサポートといった範囲でメンターの活動を行うという中間地点で他国支部と合意してメンター制度を実施することができました。
自国の行いたいメンター制度を通すため、まず他国支部側の決定権を持つ人物を見つけてその人としっかり話して個人的にある程度仲良くなること、そのあとに相手が本当に懸念している部分や理由が何かを聞くことが最終的な合意に役に立ったと思います。中韓の運営メンバーとはコロナ禍で地理的に離れている状態で、お互いの第二言語である英語で議論を進めていたのでなおさら相互に本当に意図していることが伝わりづらい状況だったのですが、他国支部が懸念を示す理由が組織として重要視している理念の相違にあることを理解できるまで相手の話を注意して聞くことの大切さに気付かされました。
実はそれまで組織におけるリーダーを務めたことがなくて。意見の相違を調整しながら一つのプロジェクトを進めるのはやはり大変でした。当初はなかなかうまくいかず色々メンバーにもどかしさを感じさせてしまう場面も多かったかと思います。でもリーダーといっても特別なことをするのではなく、チームが目標を達成するため必要なことは何かを考えて、そのために力を尽くす。たとえ言いづらいことであっても、言うべきことはきちんと伝える。議論がうまくいかないときには、じっくり相手の考えを聞いて真意を汲み取り、溝を埋めていく。そういった積み重ねによって、ある程度リーダーとして信じてもらえるようになっていくのではないでしょうか。
あと、リーダーがすべてをこなす必要はなくて、全体の方針決めやメンバーが動きやすい土台を作ることなど、リーダーがユニークに果たすべき役割、ほかのメンバーが代わりにやりづらいことに集中することで組織は円滑に回っていくと考えられるようにもなりましたね。

(「OVAL JAPAN」での活動風景)
――「OVAL JAPAN」以外にも、色々なことに取り組んでこられたんですよね。
「WAD」という早稲田の公認サークルに所属して、英語ディベートの大会に出ていました。私が参加していたのは「即興型」というもので、準備時間15分、話す時間が7分という形式でした。環境問題やフェミニズム、国際政治など様々なテーマが与えられ、自分のよく知らないテーマが提示されることもあります。でも強い人というのは、テーマについて調べられない状況でも、知識と論理の積み重ねのうまさで勝負ができる。ディベートをやっていると自分の知識の少なさに気づき、とても刺激になりました。4年生の秋には北東アジア大会に出場して、英語を第二言語とする参加者の部門で優勝できたのも良い思い出です。

(ディベート大会優勝により、早稲田大学学生文化賞を受賞)
あとは「USCPA(米国公認会計士)」を大学3年のときに取得しています。会計分野への興味があったのと、海外でいつか働きたいという夢があったので、ダブルスクールでこの資格を取ることにしました。
そういえば、高校時代も会計が好きだったので商業経済部に入っていました。祖母が経営している会社の財務諸表を見ていることがあり、これは何だろうと興味を持っていたので簿記が勉強できる早実の商業経済部に入ったんです。
実際に、USCPAの資格を生かして米国弁護士の事務所で英文経理や法律業務のアシスタントのアルバイトもできました。資格を得たことで少し専門性のあるようなフィールドを体験できる機会が増えたのもラッキーでしたね。
こうして振り返るとそこそこ多くのことに取り組んできたなと思いますが、面白そうなところにポンと飛びこんだら、そこで出会った人達が別のコミュニティや資格といった新しい世界を紹介してくれたんです。周りから勧められたものに手あたり次第挑戦していたら、結果的に色々な経験ができたという感じでした。
――ちょうど卒業の時期ですが、これから大学に入る早実生にアドバイスをお願いします!
「なんにでも挑戦できる」というのが大学の面白さかと思います。たとえば早稲田大学では学部の垣根を越えて授業を取ることができるので、他学部のロシア文学の授業を受講しています。自由に、心からやりたいことができる。
選択肢が多い分、何を選ぶかわからなくなる人もいるかもしれませんが、不安になることはありません。興味を抱いたゼミがあるなら、その先生の授業を取ってみて自分の関心とマッチしているかどうかを確認する。留学したいなら、希望の国や学校に行くために何に注力すべきなのかを詳しい人に聞いてみる。常に少し先のことを考えて、先輩に話を聞きながら情報を得るのが大事かと思います。私も実際、中高で所属していた少林寺拳法部の先輩に大学のことを相談させてもらえたので、大学に入った瞬間から話しやすい先輩がいるということは本当に心強かったです。
そして何よりも「出会い」を大切にしてもらいたいですね。大学に入ると中高の頃より関われる人の数が格段に増えて、その中には自分よりずっと賢い人がたくさんいる。そういう人たちに、未知の世界を案内してもらう感覚はすごく楽しいんです。私も大学で尊敬できる人と知り合い、関わっていく中で自分の世界を広げられた実感があります。大学は「出会い」の場。これから大学に入る人たちも、憧れ、真似したくなるような存在と出会い、他人に巻き込まれながら変化していくことを恐れず、自分なりの楽しい居場所を見つけられることを願っています。