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【高等部3年国語科】初夏を詠む ―「場」を共有する ―

投稿日 2024/5/25

 高等部3年「理系選択古典」の授業として、本校から歩いて10分ほどの殿ヶ谷戸庭園に赴き、和歌を作りました。
 古典世界の人々は折に触れて盛んに宴を催しましたが、それは単なる「遊び」ではなく、自分をアピールしてより良い人脈を築こうとする社交的意味合いを帯びていました。そこで重視されたのが、自分が心に感じたことを言葉にし、参加者皆で共有すること――つまり、和歌を詠むことでした。
 このような和歌の文学史的特性を踏まえ、新年度最初の単元として「古典版チームビルディング」に挑戦しました。単元の流れは、以下の通りです。

第1週:殿ヶ谷戸庭園に赴き、自分が心動かされた景色を和歌に詠む。
第2週:古語辞典や文法書を基に、お互いに添削をする。または「この表現の方が良いんじゃない?」といった提案をする。
第3週:平安時代から鎌倉時代にかけて作られた歌論書・歌学書(和歌初学者のための教科書)を参考に、お互いの歌を批評しあう。

 殿ヶ谷戸庭園は国指定名勝であり、「国分寺崖線」と呼ばれる段丘崖の起伏と、そこから浸出する湧水が美しい景観を成しています。教室を離れて新緑の中に誘い込まれた生徒たちは、五感をフルに使い、普段なら見逃してしまうような初夏の景物を発見していました。感情を三十一字に込めるのはやはり難しく、掛詞や縁語といった修辞法がいかに有効か、体験を通じて学んだようです。

 殿ヶ谷戸庭園の皆様、ご協力を賜りありがとうございました。