Text&Photo:Mitsuki Oda(5C)
ホラー映画と言うと、大抵の人は、怖そう……という顔をしてなかなか観てくれません。たしかに邦画でも洋画でも、有名な俳優さんが出ていてもホラー映画が映画のランキング上位に入っているのはあまり見かけませんし、アカデミー賞などの賞でも、ホラーは映画の中で一番受賞がし辛いジャンルと言われてしまっています。それでもパラサイト、エクソシスト、ミザリーとかゲットアウトとかは受賞してるけど!(パラサイトはそもそもホラー……?)
でもたしかに私も、小さい頃に見た「本当にあった怖い話」がトラウマ過ぎてホラー映画の世界に足を踏み入れるまではぜっっったいに観るものかと思っていました。ですが、怖いもの見たさでずっと観続けているうちに、段々恐怖感がマヒしてきて、どんどん怖いものを観れるようになりました。私は元気がないときによくホラー映画を観るのですが、やっぱりホラーって世界観にすごい没入できるように作られているので、気持ちが落ち込んでいるときに観ると余計なことを考えないでいられて結構気持ちが復活します。ところで、ホラー映画って結構幅広くて、当たりも外れも差が大きいです。サメの幽霊(笑)が襲ってくるというほぼコメディみたいなものもあれば、さっき言ったエクソシスト(悪魔と戦う話。めっちゃ怖い!)のように作り込まれたものまで様々です。そんなわけでいっぱいホラー映画を観たり研究したりしてきた私ですが、ふと「良いホラー映画ってなんだろう?」と思ったのです。すごい怖い描写に特化していてもストーリーがほとんどない、みたいな映画もあれば、あんまり怖くないけどストーリーやメッセージ性がすごいものもあります。そこで私は、いくつか「良いホラー映画orドラマなどなど」を見つけるための基準的なものを考えてみました。今回の話では、幽霊やモンスター、ゾンビが登場する系の話、殺人鬼が追いかけてくる系の話や人間が怖い系の話も全てホラー映画として考えていきます。
*以下、映画の内容に触れる記述があります。
まず①「怖がらせる描写が怖いかどうか」。これはビジュアル的な話で、たとえば幽霊が出てくる話なら幽霊のビジュはちゃんと怖いか(『呪怨』のカヤコとか)それ以外でも視覚的にちゃんと怖がらせてくるか(『ハウスジャックビルト』に出てくる人間の死体で造られた家とか、『コンジアム』で幽霊の顔がドアップにされるシーンとか)を☆5で評価します。
次に②「ストーリーは面白いか」。これは映画を通してちゃんとメッセージ性があるかどうか、ということも含んでいます。たとえば(メッセージ性が全く無いというわけじゃ絶対ないと思うけど!)『死霊館』という映画は呪いの人形と戦う話ですが、人形と戦う要素と家族愛のちょっとしたエピソードがメインで、何か強いメッセージ性があるかと言われるとちょっと分かりません。一方で有名な『パラサイト』は韓国の貧富の差や人間の人生について、物語内に様々な象徴を登場させた上でスリリングなストーリーを完成させていたり、少し昔の『アメリカンサイコ』という映画も、現代社会でみんながいかに他人に関して無関心であるか、ということや他人とともに生きることを過度に拒否することの生き辛さのようなものを描いています。主観だけど、ストーリーのテンポはいいかや、このようにメッセージ性が読み取れるかを☆5で評価します。
そして③「BGMが怖いかどうか」。やっぱり、ホラー映画って結構音で怖がらせている要素が大きいと思うんです。映画館だとめっちゃ怖かった映画が、家で小さな音で観てみたら全然怖くなくなった、ということも結構あるんです。最近観た中でいうとネットフリックスの『呪詛』という映画(呪いの村に行って主人公の親子が呪われる話)は、ホラー描写ももちろんなかなかに怖かったのですが、終始お経や人の呻き声のような不穏な曲が流れていた印象が強くて今でもたまに思い出します。『世にも奇妙な物語』とかもすごく印象的で不安な気持ちにさせるBGMを使ってますよね。これも☆5で評価します。
以上、これら15点満点3つの評価項目を使って、改めて今まで観てきた面白いホラー映画をまとめてみようと思ったのですが、アマプラとかで面白そうなものを見つけるとすぐそっちばかり見てしまうし、面白い作品が多すぎて収まりきらないくらい書いちゃいそうなのでまた今度にします。でもせっかくなのでちょっとあげてみると、
①『女神の継承』(タイ映画。巫女の主人公の妹一家が次々呪われてしまい、その謎を解明しようとする話。バッドエンド。観た後少し食欲が無くなりました。)
ビジュ怖☆5、ストーリー☆4、音楽☆3
②『ミッドサマー』(ハリウッド。家族を全員失くした主人公の女性が夜が来ない村で九十年に一度しかない祭りに参加するが……。お花と自然の景色はすごく綺麗。村の人々がとにかくヤバい話。観た後はなぜかレモネードが飲みたくなります。)
ビジュ☆5、ストーリー☆5、音楽☆4
③『イット』(ハリウッド。みんな知ってるピエロが出てくるアレ。赤毛の女の子が可愛いし、みんなの成長に感動する。続編も結構感動します泣)
ビジュ☆4、ストーリー☆5、音楽☆3
④『パラサイト』(韓国。貧しい一家が裕福な家族の使用人として一家全員同じ家に就職するが、その豪邸の地下で恐ろしいものを見つける話。貧富の差についてはもちろん、主人公一家の人間味溢れるキャラクター、無意識に他者を見下すお金持ち特有のあの感じや人間の人生そのものを物語的ではなくリアルに描いているところ、どのシーンを切り取ってもちゃんと意味がある描写になっている無駄のなさに感動して5回観ました。)
ビジュ☆3、ストーリー☆10、音楽☆4
⑤『アメリカンホラーストーリー:カルト編』(現代アメリカを舞台に、同性愛者の夫婦が保守派人種差別主義者のカルト宗教に追いつめられる話。と思いきやまさかの想像できない結末が待っています。多様性を取り入れていたり、実在する連続殺人事件が絡んで来たり、普通の青年がなぜカルト集団の教祖になってしまったのかを緻密に描いているところ、神経質でナヨナヨな主人公が一人で教祖に立ち向かうまでに成長するまでの過程など、全8話くらいのドラマなのですが素晴らしい重厚感です。)
ビジュ☆3、ストーリー☆10、音楽☆3
これ以外の項目にも「登場人物のキャラクター」や「俳優さんたちの演技」なども項目に加えたら、さらに細かく面白いものを見つけられるかもしれません! あと、ホラー映画でもバッドエンドよりハッピーエンドのほうがいいですよね!