Text&Photo:Kanoko Hashimoto(5D)
友達の誕生日に悩む事はありませんか? 誕生日の相手が知り合い程度ならおめでとうと一声かけるだけだったり、すごく親しい友達には前もって特別なお祝いを考えたり。祝い方って、大抵は仲の良さで決めると思います。
しかしその「仲良し度」は結構判断が難しいものです。実際、「この人とはどのくらいの距離感なんだろう?」と考え始めると「自分が仲良いと思っていても相手は思ってないかもしれないしな……」なんて悩んじゃいます。それで結局チキって、自信を持って仲良いといえる数人以外、おめでとうと声をかけるだけにしちゃうんです。小さい頃はこんな事で悩むことなんてなかったのに。
また、自分の誕生日を想像してみてください。これもだんだん考え方が変わってきていませんか? 思えば子供の頃は1年に1度しかない超特別な日だったのに、今は毎年あるまあちょっと楽しみな日です。小さな変化に見えるかもしれませんが、これは確かなランクダウンです。
何が言いたいかというと、要は最近自分の誕生日も友達の誕生日もだんだん適当になってきているということです。
そんななか、最近観た映画で、私は誕生日に対する気持ちが少し変わりました。その映画は『ちょっと思い出しただけ』(2022)というラブストーリーです。ダンサーの男性(照生)と、タクシードライバーをしている女性(葉)の恋愛関係を、照生の誕生日だけを1年ずつさかのぼって描いています。ここでは二人の出会った年とその翌年の、照生の誕生日を比べてみます。
二人が初めて出会った年。初め、葉と照生はお互いのことを何も(照生が誕生日であることも)知らないため、気まずい雰囲気でした。しかしそのあと些細なきっかけで二人で帰ることになりちょっと仲良くなって1日が終わります。
その次の年。誕生日プレゼントを用意していた葉は照生に会いに行くも、親しそうな女性に祝われている彼を見かけてプレゼントをわたさないまま逃げ出してしまいます。
この2年の誕生日をみるだけでも、「誕生日プレゼントを用意していた」ところから、葉と照生は1日だけの関係に終わらず何かしら関係が続いていたことがわかりますし、「逃げ出してしまった」ところからその関係は明確な付き合っている恋人とかではなく、あやふやだったことがわかります。このように、この作品のすごいところは誕生日の1日を描くだけでそれまでの364日を私たちに想像させてしまうところです。
でもこれは言ってしまえば誕生日という日のすごさでもあるんです。だって誕生日の行動を見るだけで赤の他人でも二人の距離感を想像できてしまうんですよ。こんなにも相手との「仲良し度」が表れる日はありません。ここで話は戻りますが、私は多くの友達の誕生日を「おめでとー」のたったひとことで済ませていたわけです。今考えるとひどい話ですよね。仲の良さを「一言祝っとく程度の仲ですよ」と伝えるようなものですから。自分から壁を作っているようなものです。そこで誕生日を、映画の題名通り1年間を『ちょっと思い出し』てみる日にするのはどうでしょう。どういうことかというと、親密度を考えなきゃいけないからと言って「めんどくさい日」にするんじゃなくて、この人と1年間なにしたかなーなんて考えるんです。来年もっと仲良くなりたいなーとかでもいいんです。そうしたら自ずと行動も変わってくるでしょう。