Text:Rione Tsuji(5D) Photo:warashibe
今回のインタビューは、電通本社の入り口がわからないというハプニングから始まりました。厳重なセキュリティを抜けると素晴らしい眺望の会議スペースが。取材では終始笑顔で、お仕事を心から楽しんでいる様子が伝わってきました。
福島 陽(ふくしま ひなた)
高等部から早実に入学。卒業後、早稲田大学政治経済学部に進学。コロナ禍であった早稲田祭2020の運営スタッフ代表を務める。現在は株式会社電通に勤務。
――電通では具体的にどのようなお仕事をされているのですか?
私は今、コピーライターとプランナーっていう職種の見習いをやっています。「クリエイティブ」と呼ばれる部署で、企業の商品やサービス、経営などに関するあらゆる課題を扱います。チームで言葉を考えたり企画を立てたり、そうやってクライアントさんの悩みをアイデアで解決するのが仕事です。
この会社は無形商材なので、何か決まったサービスや商品の形は一つもなく、ゼロからアウトプットしていきます。話し合うのは電通のチーム内だけではなく、クライアントさんも巻き込みながら一緒に考えていくので似た仕事が今のところ一つもなく、楽しいです。
アイデアを考える上で大変なことはたくさんありますが、感覚で言うと早実時代の部活を思い出しますね。動きは頭でなんとなくわかっているのに再現できない。だから、すぐうまくなるもんじゃないけど頑張れば頑張るほど伸びるって信じています。
――電通に入ることになった経緯を教えてください。
早稲田祭の影響で就活を始める時期がほかの人よりも遅れをとっていて。まだ何もしていない、どうしようと思った時に思いついたのが、高校3年生の時に受けた「ようこそ先輩課外授業」でした。学年の玉井先生がいろんな卒業生を集めて一人一コマ授業をしてもらう。それで自分の将来の選択肢を広げようっていう内容です。そこに担任の先生と仲がいい電通の方がいらっしゃって、「どうせ会議するなら面白い会議をしたい」とおっしゃっていたのが印象的で。就活するときにそれを思い出したことがきっかけです。
――仕事をしていく中で、何か生きがいというか、楽しいなって思うことは?
「人」ですね、やっぱり。もちろん担当させていただいた案件が、売り上げが伸びましたとか、話題になりましたとか、すごく嬉しいことではあります。でもそれ以上に、私達に仕事をお願いしてくれるクライアントさん、日頃から気にかけてくれる先輩と一緒に喜べるのが一番のやりがいですね。
高2の時、担任の先生が三者面談でお母さんに伝えた言葉がすごく印象に残ってて。「福島陽は他人の喜びを一番に喜べる人です。みんなが嬉しそうにしていることが一番嬉しそうなんです!」って力説してくれたんですよ。言われてみれば、早稲田祭とかも代表になりたいって思ったきっかけは、その方がみんなを喜ばせられるからでした。結果的にそれが自分の満足にもなるんですよね。私の今の仕事もきっと、周りの人を喜ばせたいっていう気持ちから続いている気がします。
――ちょっと変な質問ですが、電通以外でやってみたい仕事はありますか?
これもまた「ようこそ先輩」で出会った、リクルートで働かれている方の言葉がありまして。「やりたいことは知っていることからしか見つからない」って言葉なんですけど、確かに学者になりたい人は学者っていう職業を知っている。知らないのにやりたくなることってないんですよね。当たり前ですけど。だから知ってることをたくさん増やすことが、やりたいことを見つけるためにはいいなって思ってます。
一生広告代理店にいたいとか電通にいたいとか、こういう風な仕事をしたいっていうのは本当に現時点では何もなくて。この会社にいるといろんな出会いがあるから、もしかしたら何かを知ってやりたいことが見つかるかもしれないなとなんとなく常にワクワクしています。
――高校や大学での活動について教えてください。
高校の時は特に何も考えないで部活に打ち込んでいました。でも、担任の先生に「ただ4年間過ごすだけじゃあもったいないから、絶対大学で一個何かを成し遂げろ」と言われて、その言葉は大学に入ってからもぼんやり覚えていました。
早稲田の面白いところは「何者かになりたい」っていう人が集まってくること。私たちは割と当たり前の感覚で早稲田大学に進学するのだけれど、なかには何年もかけて並々ならぬ情熱を抱えて入る人もいるわけで、そこにはすごい刺激を受けました。やっぱり死ぬ気で入ってきているからこそ一旗揚げたいって思う人が多くて。そういう気持ちで頑張っているところを見ると、私もただ4年間過ごすだけじゃもったいないなと感じたし、自分もこの大学を変えられる一人になれるんじゃないかと思いました。早稲田祭の運営スタッフはメンバーが600人いて、全国の大学で見ても一番大きなサークルなんですよ。本当にいろんな人がいるから、その中でリーダーシップをとるのはすごく勉強になりました。コロナですべてオンライン開催になったから、何もかもゼロからのスタートで。0から1を作るあきらめない心はそこで身についた気がします。
高校で組長とかはやってなかったんですけど、学校行事がすごく好きだったから文化祭のクラスの実行委員をやりました。高3ではライオンキングの劇を作ったんだけど、普段サッカーとか野球とかやっている奴らが一緒にダンス踊ってくれるとか、全然みんなやったことないステージ装飾を一緒に作る感じとかがすごく楽しくて。そういう一つの行事に対してみんなで頑張るっていうのがすごく好きだったことが、早稲田祭につながっていたと思いますし、結果今も会社でそういうことをしています。
あとは、やっぱり早稲田実業から早稲田大学へっていうレールがあるメリットはすごく大きいですよね。ほとんどの早稲田生は何も、誰も知らない状況から始まる。だけど、私たちはすでにたくさん友達がいるから、他の世界に飛び出したり、気になる授業とってみたり、そういう意味でのチャレンジがしやすくて。だから早実で良かったなと思いました。またいざとなったら早実生は勉強もちゃんとしているので、テスト期間などに助け合えたのもありがたかったです。
――早実生へのアドバイスはありますか?
早実生らしいことをめっちゃ全力で楽しんだ方がいいなって思っています。文化祭とか部活応援。あとはもっと生徒発信でいろんなことやってもいいのになっていう気持ちもありますね。早実は伝統行事が多いけど、例えば昼サカ(*昼休みのクラス対抗サッカー)みたいな新しいイベントだってあるわけだから、言い出せば作れると思うんですよ。せっかく大学受験がなくて高3の卒業前なんかはすごく暇だから、こうあったらいいのに!みたいなことを勝手に話し合って提案して、上級生が後輩に何かを残してあげてみても良いんじゃないかなと思います。早実ライフ、思いっきり楽しんでください!