卒業生インタビュー:佐伯美月さん(2017年度卒/日本公認会計士協会準会員)
Text:Ayumi Nakagawa(5A)・Shuya Boda(5E) Photo:warashibe
元生徒会長と聞いて取材者は当日かなり緊張していたのですが、ご本人の柔らかな雰囲気のおかげでとても和やかなインタビューとなりました。学生時代の経験がいまのお仕事にどのようにつながっていったのかお聞きしました。
佐伯 美月(さえき みつき)
初等部から早実に入学。在学中は生徒会長を務める。早稲田大学政治経済学部に進学し、公認会計士試験に合格後、監査法人に勤務。
――現在のお仕事について、内容や目指すことになったきっかけを教えてください。
2021年に公認会計士試験に合格し、今年から大手監査法人で働いています。主な仕事は企業が正しい決算書を公表できるかをチェックすることです。最終的には決算書にある文章や数値を見ていくことになるのですが、ただ資料の数字を見るだけではなく、その背景にある企業の特徴や方針、経済環境との繋がりなども読みとることを大切にしています。これまで関わりの薄かった分野の企業を担当しているのですが、業界の理解という大きな視点から、工場でのものづくりの理解という現場の視点まで、様々な観点からビジネスを理解できること、知らなかった世界を知ることができることにとてもやりがいを感じています。
公認会計士を目指したきっかけは、大学生の時に、AIG高校生外交官プログラムという国際交流プログラムの運営側として活動したことです。そのプログラムは日本人高校生をアメリカに派遣したり、アメリカ人高校生を日本に招待し、それぞれの国で日米の高校生が一緒に過ごしながらお互いの文化を共有しようとするものでした。参加する高校生からは一切お金をいただかないため、参加できる高校生に限りがあり、希望する全員に届けることができない悔しさを感じていました。
だからこそ、社会的意義のある事業やプログラムを資金面から支援できる存在になろうと公認会計士を目指しました。今の私を形作ってくれた国際交流プログラムを支援したいという目標はありますが、すぐに達成できるものではないと思うので、地道に頑張っていきます。
――国際交流プログラムは大学生の頃に初めて関与されたのでしょうか。
実は初めてではないんです。大学生の間は運営側として携わっていましたが、高校3年生のときに同じプログラムに参加しました。
中学3年生のときに当時通っていた塾の先生にこのプログラムの紹介動画を見せてもらったのですが、そこに映っていた方たちが全力でプログラムを楽しんだり、仲間のことを応援し合ったりしている様子が伝わってきて、参加したいという気持ちが芽生えました。その後、高校2年生の時に一度応募したものの、実力が足りなくて審査で落ちてしまいました。どうしても諦めきれず再度応募し、高校3年生の夏についに参加することができました。プログラムの10日間はずっと英語で、参加者同士お互いの文化を教えあったり、社会課題についてディスカッションをしたり、お互いのことを理解し合うためのアクティビティを行ったりしました。どうやったらバックグラウンドの違う相手と仲良くなれるかを考えながら過ごす、すごく充実した日々でした。
私が経験してきた以上のプログラムを後輩たちに届けたいと思い、大学入学後には運営側として携わることに決めました。プログラムの中身を企画し当日運営するだけでなく、参加者の選考に関わったり、参加者の目標達成に向けたサポートをしたりと、高校生の成長に色々な角度から携わらせていただけることにやりがいを感じていました。
――ちょうど学生時代の話題が出ましたが、社会人と学生時代とでギャップはありましたか?
社会人になって感じたのはそれまで敷かれていたレールがいよいよなくなったなということです。初等部出身ということもあって、大学までは自分の進んでいく道がなんとなく見えている感覚がありましたが、卒業後は自分で道を切り開いていくことも大切だと実感するようになりました。
大きな話だと進路です。大学以降はそれぞれの生き方の違いがはっきり表れてきて、私のように企業に就職する人や大学院を目指す人、海外に働きに行く人など、完全に別々の道を進んでいるように感じます。無数に選択肢がある中で自分はどうしたいのかを考えるのは大変ですが、悩むからこそ自分の決断に自信を持てるようになるのかなとも思います。
もっと身近な話だと、自由に使えるお金が増えて、休日の過ごし方の幅が広がったと感じます。旅行に行ったり、学生時代からの友人と遊んだりと、好きなことに時間もお金も使えることが嬉しく思います。
色々話してきましたが、学生時代にはなかった自由と責任を同時に手にしたのが一番大きな違いですね。
――もう少し学生時代の話を掘り下げて、大学での活動について聞かせてください。
サークルの話になりますが、高校時代の国際交流プログラムの経験から国際関係のサークルに入ろうと思い、模擬国連サークルに所属しました。模擬国連サークルでは、大学生が各国の大使になりきり、実際の国連の会議を模擬しました。例えば、難民問題が話題になっていたときに実際に中東の難民問題について議論しました。
大学生になると高校まで以上に色々な場所から人が集まります。私自身はそのようなバックグラウンドの違いを楽しむことができました。海外からの留学生もたくさん大学にいたので、そういった人たちの経験を聞くのも楽しかったです。サークルのように似た興味・感覚をもったコミュニティで関わることが多かったので、もう一度大学生になれるなら、もっと色々な価値観を持った人たちと関わりたいなと思います。
――早実生も学年が進むと、大学での専攻など自分で選択する機会が増えてきます。選択に際して大事にしていることがあれば教えてください。最後に早実生へのアドバイスもぜひ。
「自分はこれをしているときは楽しいなぁ」とか、逆に「これしているときは楽しくないなぁ、苦手だなぁ」といった些細な感覚を大切にしてもらえたらと思います。その感覚を深堀りしていくと、価値観のコアにたどり着けると思うからです。自分と向き合って、自分に対して素直に選択していくのがやっぱり大事だと思います。
在校生には行事の一つ一つや何気ない友達との時間を本当に大切にしてほしいです。教室でだらだら喋った時間も今となってはいい思い出で、高校までしかできない特別な出来事だなと思います。あと、唯一後悔しているのは制服でディズニーに行かなかったことなので、皆さんぜひ制服を着られるうちに行ってください!笑
そしてたくさんの大人に頼ってみてください。身近なところには先生方がいらっしゃいますし、学外にも皆さんのような高校生を応援したいと思ってくれている大人がきっといます。頑張りを応援してくれる人、悩んだ時に一緒に考えてくれる人たちとの時間を大切にしながら、学生時代を思いきり楽しんでほしいと思います。